【短編小説】不思議な夏の日の思い出

気づいたら俺はグラウンドに立っていた。今日は野球の試合、しかも朝、昼のダブルヘッダーらしい。

俺は10人しか選手がいないチームに所属しているみたいだ。

監督「1試合目のスタメンを発表する。1番ショート〇〇、2番・・・」

俺「...(って、中学の時の野球チームのA監督かよw。)」

監督「9番ライト〇〇。以上。おにーやん、お前はベンチだ!」

俺「はい!」

俺はチームで唯一のベンチスタートだった。

(試合の内容は覚えていないので割愛)

試合が終わると昼休みの時間となり、チームメイトは球場のバックスクリーン裏の駐車場みたいな場所でそれぞれお弁当を食べ始めた。

何故かここで突然母親が登場。

母親「おにーやん、お弁当持ってきたよ」

俺「おう」

母親から弁当を受け取ると、俺は1人のチームメイトと向かい合って弁当を食べ始めた。顔を見たら中学の頃仲の良かった同級生だ。お前もいたんか。

そしてよく見たらそのチームメイトの後ろに見たことのある奴が1人で弁当を食べていた。俺は気になったのでそいつの元へ歩み寄り顔を確認すると、今度はバイト先にいた大学生Kだった。

俺「あれ、君は…」

K「おにーやんさん、俺試合見にきたんすよ!」

俺「うおw」

そいつと話しているうちに、俺は2試合目の試合開始時間目前だという事に気付いた。しかも2番レフトでスタメンだ。

俺は今いるバックスクリーン裏から回って三塁ベンチ方向へと走り出した。しかしその足がめちゃめちゃ重い。チームは俺を差し置いてすでにシートノックやらを始めている。

俺がやっとのことでベンチに着いた頃には、すでに試合は始まっており、1番打者のチームメイトがシングルヒットを放った所だった。

監督「お前おせーよ!早く打席に立て!」

俺「はい、絶対に打ちます!」

俺は急いでヘルメットを被り、バットを持ち、バッターボックスに立つと、監督がよくわからない仕草をした。

俺「(これ、サインか?何のサインだ?わからないよー。どうしよう…)」

相手ピッチャーがいきなりボールを投げると、俺は咄嗟の判断でバントの構えをし、ボールが外に外れそうだったのでそのままバットを引いた。

俺「(野球を辞めて10年経つが意外とこの感覚覚えているもんだな)」

監督の方を見ると、今度は分かりやすく素手でバントの構えをしていたので、やはりバントのサインだったのだと理解した。

俺は相手の2球目を見事にバットに当て、送りバントに成功した。

その後点が入ったかは覚えていないが、こちらの攻撃が終わり、守備につくためにレフトの位置へ走っていくと、見たことのない顔の奴が何故か既にレフトの位置に着いていた。

俺「あれ、なんで?俺がレフトなんだけど」

???「俺センターなんだけど、センター嫌なんだよね。だから俺がレフトを守る。」

俺は度肝を抜かれた。こんな自分勝手が通用するのか。

俺もレフトが好きだったので、その場所を動かず、試合が始まってもレフトを2人で守り続けた。

俺「監督~~こいつになんとか言ってくれ~~」

 


バサッ。なんだ、また夢か…

俺は現実に戻ってきたことを知り、少し安堵すると同時になんだか虚無感を感じた。

俺は明後日から新しい会社に入社し、新しい生活がスタートする。